しあえる / フクナガさん
しあえる / フクナガさん
伊吹山のふもとで生まれ育ったフクナガさん。コロナ禍を経て、自分自身の人生の節目もきっかけとなって、地元への恩返しを考えるように。「伊吹にはまだない、『こども食堂』をつくりたい」と、実家の近くの空き家を購入、2024年4月に「みんなの居場所・地域食堂しあえる」をオープンさせました。子どもからお年寄りまで楽しめる食事やカフェメニューの提供のほか、地域の人や同世代の交流だけではない、多世代・他地域との交流や情報交換ができる場づくりを進めています。
この家や地域との出会い地元ではずっとホッケーをしていて、今も指導者として関わっています。子どもたちや地域の人たちのために何かできないかと考えた時に、伊吹にはまだ例がなかった「こども食堂」を開きたいなと思いました。こども食堂=貧困というイメージがあるかと思うのですが、そうではなくて、「おいしいものをみんなで食べる」ことを中心に据えた、多世代・他地域交流の場を作りたかったんです。
コロナ禍の時に、オンラインで心理学の講義を受け、その時に「他者貢献」、つまり、人に「親切をする」という行為は、単純に相手を救うという利点だけではなく、巡り巡って自分自身の自己肯定感を高める行為と言える、ということを学びました。
では具体的に僕は地元で何をすればよいか。「直接支援につながることは何か」「食べることが子どもたちの福祉になる」を考えた時に、地域に居場所をつくろう、という思いが高まりました。
僕自身、子育てが一段落して、50歳を迎える人生の節目というタイミングも大きかったと思います。
このようなビジョンが自分の中である程度固まっていたので、まいばら空き家対策研究会に相談に行った際には、ピンポイントでこちらの家を紹介していただけました。
ここは、小さいころから馴染みのある地元であり、学校やホッケー場が近くにあります。子どもやその保護者も気軽に立ち寄れて、地域の高齢者の人たちにも、散歩がてら寄ってもらえます。近所の人の顔が見えることで安心安全につながると思うんです。
所有者さんからは、「自分の手は離れるけど、あなたが買ってくれて、誰でも立ち寄れる場所にしてくれるのなら、自分もまたこの家に入ることができるので嬉しい」と言っていただけました。
今あるものを活かす、わたしのリノベーションこの家の棟木には、昭和24年の建築と書かれています。傷んでいるところもありますが、雪深い地域でずっと耐えてきた強い家であり、歴史もありますので、基本的には今あるものを活かして、自分でできる範囲でリノベーションしました。
玄関を明るい雰囲気にして、食堂の部分には大きなテーブルを何台か配置しますので、ふすまを取り外して大きなスペースにしたり。台所は比較的大きな改修になりました。2階には、小さなお子様連れのお客様でもゆっくり過ごせるようにと、お座敷席を用意しています。
キッチンには、昔ながらの「おくどさん」(かまど)もあるので、今後はそれも活かしていきたいです。
庭の草木の手入れも根気のいる作業でした。
画像をタップして矢印をタップすると、変化を確認できます!
玄関土間と手すりはそのまま活用!
画像をタップして矢印をタップすると、変化を確認できます!
リビングは、仕切りを取り払って広々とした食堂のメインスペースに。
床の間の部分も含めて利活用、フリースペースになりました。
画像をタップして矢印をタップすると、変化を確認できます!
2階にはお座敷席を用意しました。
ここでしかできない、こども食堂食堂で提供しているお料理は、母と妻が担当してくれています。最初にこういう活動をしたいと相談した時に、妻が2つ返事で「やります!」と言ってくれて、それを聞いて母も応援してくれました。心強い、頼りになる2人です。メニューや実務は基本的に2人に任せています。
こども食堂は月に一度開いていて、時間は16:00~19:00、料金は子ども100円、大人300円です。
日替わりランチは基本的に週5日、定休日は月・木(予約があれば定休日も対応します)メイン料理とお惣菜を数品、ごはん、汁ものなどでお1人1,000円となっています。おすすめは、母の得意料理「鯖寿司」。夏の間は「五平餅と焼き鯖寿し」を提供する予定です。お持ち帰りもできます。
親戚や、地元の知り合い、ホッケーで知り合った遠方の知人、行政の支援などに助けられて、食材の提供や運営への協力をしてもらい、とてもありがたいです。
第1回目に開いたこども食堂には、大人と子ども合わせて37名様ものお客様が来てくれました。30名を想定していたので、大盛況!
子どもたちが、普通に「おいしい、おいしい!」と言いながら食べてくれるのを見て、自分が作っているわけではないのにとても嬉しかったです。
大人数で食卓を囲んでごはんを食べるということも、最近ではなくなってきていますので、その食事の光景自体もなんかいいなぁって、思いましたね。
カフェタイムにも手作りのスイーツ。ランチメニューの一例。ボリューム満点!
これからのことたくさんのお客様に来ていただきたいですが、経営的なことよりも、地元の人が気兼ねなく立ち寄れて、こちらも負担になることなく、長く続けていくことが、ここでやっている「正解」だと思います。
子どもだけでなく、大人やお年寄りもここに来て、息抜きをしたり、家に引きこもるのではなく外に出ようというきっかけになったり、色んな人としゃべって色んな事に気づく、そういう交流の場が生まれたら最高ですね! お客様からの、ここをこんな風に使いたい、ここでこういうことをしたい、という声にも応えていきたいと思います。
駐車スペースや、裏の隠居の部分はまだ改良の余地があるので、今後の楽しみにしています。ゲストハウスとして整備するのもいいかなと夢が広がります。
ちなみに、屋号の「しあえる」は、みんなが気軽に「し合える場」という意味を込めました。名前を考えなきゃ、となったときに、インターネットで、フランス語やイタリア語のようなおしゃれな表現?(笑)を探していて、「シアエル」という音感を見つけました。「し合える」という意味に通じるし、いいかも! と、夫婦で即決でした(笑)
取材をしてみて
「ちびまる子ちゃん」の世界では、家にはおじいちゃんおばあちゃんもいて、近所の大人はどこの家の子どもにも声をかけて、時には叱って、空き地で鬼ごっこをして、駄菓子屋さんでおしゃべりして、という風景が日常です。筆者もそれに近いご時世に子ども時代を過ごしました。身近なところにいくつもの種類の違う居場所があり、意識をしなくても多世代交流が叶いました。核家族化が普通になって、地域でのつながりも希薄です。そんな中での、しあえるさんの取り組みは、空き家の利活用だけに止まらず、地域の課題にもきちんと向き合い、歓迎すべき、ちびまる子ちゃんの世界の再現ではないでしょうか! 家の改修には、あたたかな「昭和レトロ」な雰囲気が残されていて、そこにいるだけで落ち着く・・・しかも、居合わせた人たちと一緒にワイワイと、おいしいものが食べられるなんて最高です。
地に足のついたフクナガさんの取り組みにリスペクト、これからも応援させてください!
カワムラ