観行寺住職 / ノリクモさん
観行寺住職 / ノリクモさん
米原市の姉川上流地域、甲賀にあるお寺で住職をされているノリクモさん。コンピューターのプログラミングに精通し、ネットワーク構築などテクノロジー分野での実績も。現在は大学の名誉教授で、時々、学生の指導に行っています。さらに、まちづくりの分野にも力を入れ、地域の人口減少に伴う過疎や空き家対策の分野でも活躍されています。
この家や地域との出会い自分が住む地域では、年々戸数が減っています。少しでも村の存続のためにと思って、空き家を改修し、人に入ってきてもらいたいという想いがあります。とはいえ、この家は玄関に芋を埋めておく穴があったり、かまどが残っていたりするようなとても古い家。所有者さんは「つぶした方が早い」と言っていて、わたしも当時は同意見でした。でも、古民家に詳しい専門家に見てもらうと「この家は古き良き田舎的な家で、残した方が良いのでは?」という意見が。DIYの教室にこの家を使えないかという話もあったので、家を買い取って、DIYでは手のほどこしようがないような箇所の修繕をすることに決めました。
人を呼び込みたいなら、住んでもらえる家に人に住んでもらいたいのであれば、最低限の生活ができるように整える必要があります。屋根・床・壁の他にも水回り・給湯・キッチンなど、人が生活できる環境を整えるために半年かけて整備しました。
草葺の上にトタンがかかった三角屋根。この辺りの地域でよくみられる形の古民家です。屋根に穴が開いて、雨漏りが…。その結果、室内も床板が腐って落ちている大変な状態でした。DIYで床を直す前にまずはと思い、新しいトタンをかぶせる工事を業者に依頼しました。屋根の修理が伴うと、価格も修繕も大規模なものに。こういった状態の家が「壊した方が良い」と言われる理由でもあると思います。
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この家のトイレには驚くことに、排泄物を貯めておいて捨てに行く…みたいな、古い時代の面影が残されていました。下水を接続し、トイレも水洗化しました。
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お湯の沸かし方についても、ボイラーがなかった時代の方式だったので、新たにボイラーを取り付けました。浴槽は元からあったものを磨きました。
キッチンはほとんど自分で整備。かまどや鉄砲風呂など、使えなくなっていたものの撤去作業も多く大変でした。食べ物を扱う場所なので、天井も貼りました。
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天井裏の萱もそのままだと落ちてくるので、ススまみれになりながら降ろして…。動物のフンもたくさん残っていました。木材屋さんに運ぶのがとても大変でした。
続いて、DIY教室での修繕の様子です。
まず、天井磨き、柱磨き。天井にのこった汚れやカビなんかは、磨くだけでもピカピカで見違えるのが驚きでした!植物の油も使って、大勢の人が磨き上げてくれました。壁の珪藻土塗りは、職人さんも一緒にやってくれて、かなりの完成度。砂壁や繊維壁が白く塗られて、部屋全体が明るい雰囲気になりました。
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最後は、床と壁!腐った畳をみんなで切って運び出し、根太や柱が腐っていたので、一度床をすべて撤去。枠組みを作り、断熱材を入れ、捨て板を貼り、一部屋を残してフローリング化しました。建具も抜いたので、だいぶ印象が変わりました。
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業者と、わたしと、DIY教室に参加した大勢の人の手で。みちがえるような空間に!
残りは入居者でどう使いたいか、どこにこだわりたいかによっていくらでもリノベーションできる余白も残しています。せっかく直したこの家も、使われなければまた月日が経ってしまいます。入居者が決まるのが楽しみです!
どんな人に住んでもらいたいか?人口減少が著しい地域なので、若い人や子育て世帯にも興味を持ってもらいたいです。山暮らしで雪も深いところだから、お試しで一時的に住むのも大歓迎。田舎暮らしをしてみたいけれど、実際にどんな点が大変なのか経験したり、地域とのかかわりを持ったりしてから移住を検討してみるのもいいと思います。実際、冬に何週間か滞在して、ここから仕事に通ってくれた人がいましたよ。
古い家を再生させてみて、今思うこと”古民家やDIYは安く済む”というイメージが強いですよね。もちろん、物件の状態や修繕の仕方によってはその通りになる場合もありますが、そこに住もうと思えばある程度お金と労力がかかるのが古民家再生の事実でもあります。特にこの家のように、屋根から床から…と考えていると、結局トータルすれば新築の家を一軒建てるようなお金がかかったりする場合もある。家の状態や考え方によっては、「家を建てる」のと同じような感覚で、あえてお金や時間をかけて「古き良きもの」を残して直しながら生活を楽しむ。そんな選択肢があってもいいんじゃないかな。
取材をしてみて
今回の物件は、空き家バンクにある物件の中でもなかなかハードな改修が必要な例でした。わたしもDIYの作業に参加させていただきましたが、この家がこんな風によみがえるなんてはじめは想像ができませんでした。お金やプロの力が必要だし、誰にでも真似できる改修ではないのかもしれないけれど、こういう大規模なリノベーション例を紹介することで、今まで流通しなかったような物件に対しても再生の幅が広がったらいいなと思いました!「この物件は壊すしかないかも…」という家がよみがえるのは嬉しいし、この家ともご縁がつながりそこで誰かの生活が始まるといいなと思います。
地域おこし協力隊 アサイ